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Sunday, April 26, 2009

ダパの民話をお送りします。生き別れの姉と弟が再会する話です。
私は、このお話、ドラマチックで好きです。山また谷の地形を
思い出しながら読むと、なかなか会えずに行き違ってしまう情景が目に浮かぶようです。


1.

 昔、女の子と男の子の姉弟がいた。男の子は、抜きんでた子だった。二人には母親がいたが、病で死にかけていた。

 母親は、死ぬ前に、命令した。「大きな神山がある。自分が死んだら、その神山の上に持っていって埋めなさい。埋めたら、その横に香を焚く塚を建てなさい。おまえたち二人に、何か困ったことが起きたら、そこを左回りに3回、右回りに3回、まわって、私を3度呼びなさい。私の魂が出てくるでしょう。体も出てくるでしょう。」

 また、こうも言った。「今夜、一人、来る人がある。そいつを泊めてはいけない。そいつは年取った女だ。」そして、その夜、母親は死んだ。

 母が言ったとおり、女の子は山の上へ背負って行って、埋めて、きちんと葬った。そこに石を積んで、香を焚く塚を建てた。そのあと、一人のおばあさんに出会った。

 さて、その女の子の方が上の子で、下の男の子はまだ小さかった。非常に美しくて、賢い子だった。

 牧畜民たちが言うには、その頃、イェト村全部の子供たち、メト村全部の子供たち、みんな一つの所に集められていたんだそうな。イェト村には大領主がいた。大領主には、子供がいなかった。それで、イェト村の子供たち、メト村の子供たちを集めて、その中に矢を射る。子供たちの中に、美しく、抜きんでた子がいたら、その子の前に矢が当たる。そうやって、領主は子供をほしがっていた。

 さて、娘は母をきちんと葬った。その後で、一人のおばあさんに出会った。そして、そのおばあさんを泊めてやることにした。

 実は、そのおばあさんは、子供を一人手に入れようと探している人だった。そうしたら、そこに、男の子がいた。夜も更けて、みんな寝た。そして、おばあさんは、男の子を背負って逃げた。

 そこを去ってから、おばあさんは、非常に遠いところまで運ばなければならなかった。そして運んでいったら、領主はそのおばあさんに、怖いくらいたくさんの、たいへんなお金を与えた。

 娘は、母親の所へ呼びに行った。3度叩頭し、左回りに3回、右回りに3回まわって、母を3度呼んだ。

 母は、こう言った。「お前に、泊めてはいけないと言っただろう? 領主は、子供がいないから、矢を射て、そういう子供を見つけようとしているんだよ。」

 母が、死ぬ前に言っていたことがある。「娘よ、お前にはこの先、かわいそうな目に遭うだろう。息子よ、お前はこの先、かわいそうな目に遭うだろう。忘れられないしるしとして、息子はお碗を一つ持っている。娘は腕輪を一つ持っている。あるとき、お互いに忘れてしまって、思い出せないことになるだろう。そのとき、この、しるしを見せなさい。それを見たら、お互いのことを、思い出せるだろう。」


2.

 さて、男の子は泣きながら遠くへ去った。長者が矢を射ると、その男の子の前に2回当たった。その人は、長者でもあるし、領主でもあった。

 男の子はまだ小さかった。おばあさんは、領主から御礼のお金を手に入れた後、その小さい男の子の面倒をちゃんと見ていなかった。2回の矢は、どちらもその子の前に当たったのに、男の子はそれを拾うことができなかった。

 その後、男の子は、歩いて、歩いて、しばらくして自分の家に戻ってくることができた。

 娘は、一つ一つの谷の中を探して歩いた。谷はあまりにもたくさんあって、弟を見つけることはできなかった。

 弟は、美しくて賢い子だった。帰ってくるのに、3年かかってやっと家に着いた。その後、母の所へ呼びに行くのだが、「僕の姉さんもいない、家もない、何もかもおしまいだ。」と、着いてすぐの時は、ちょっと忘れていた。村人たちに尋ねると、「姉さんはお前を探しに行ったよ。」と言う。それで、隣の家で泊めてもらうことにし、その夜はそこで寝た。

 次の朝になって、思い出した。それで、母の所に行った。母がかつて言ったとおり、3度叩頭して、左回りに3回、右回りに3回まわって、母を呼んだ。「姉さんがいないんです。」母が言うには、「姉さんはどこかで道に迷ってしまった。お前は、姉さんを探しに行きなさい。」それで、弟は姉を探しに行ったが、なかなか見つけることができなかった。

 さて、最初の1年間は、矢を射る件の方もうまくいかなかった。長者は、しみったれた子の前に矢が当たると、自分で矢を拾い、その子を領主の跡継ぎにはならせなかった。


3.

 娘は、弟がいたところに来たのだが、すれ違ってしまった。娘は、「私たちの所の子供は、6歳の頃、おばあさんに連れて行かれたんです。そんな子供を見かけませんでしたか?」と尋ねた。すると、ある人が言った。「そういう子供の前に、矢が2回当たったよ。でも、その子はいなくなって、もう3年たった。」娘はひどく悲しくなった。イェトあたりの場所まで行って尋ねた。また、反対側へ行って、セップあたりにまで行った。そうして、別れてから3年たった。

 娘は、おなかがすいてどうしようもなくなった。それで、長者の家で使用人になった。使用人には3種類あったが、娘はその中で一番きついのになった。牛を追って一番最初に出かけ、また、帰ってくるときには、最後にしか帰ってきてはいけなかった。食事の時は、ほかの人がみんな食べてしまってからで、娘の分はスープの汁気が少しだけしかなかった。

 そうして、3年が過ぎた。

 男の子は、そのあたりへやって来た。長者が子供を選んでいるところへやって来た。「私の姉を見ませんでしたか?」「そのあたりを歩いていたが、もう何年も前だ。」

 ある、日柄のいい日に、弓が射られた。そうしたら、その男の子の前に3度当たった。男の子は少し成長していた。最初に矢を射たとき、彼の前に当たった。2度目も、また、彼の前に当たった。3度目も当たった。男の子は、長者に呼びかけた。「あなた方は、この矢を認めますか? 私の前に、5回当たりましたよ。以前、2回当たりました。その後で、3回当たりました。あなた方のこの矢で、私は姉も失ってしまいました。」

 このように呼びかけると、長者がやってきた。そうしてみたところ、この男の子はずば抜けている。あのおばあさんにお金を与えて、おばあさんがこの子を連れてきたのに、そのときはまだ小さかったのだ。長者はそのおばあさんを叱った。

 そうして、男の子は少し離れた別の建物に住むことになった。


4.

 姉のいるあたりの人々は、こぞってその男の子に会いに行った。彼は名前も美しくて、ジャパドッジという名前だった。一つ一つの村の人がみんな、彼に会うためにそこへ行った。そして、その子の名を周りの人が言っているとき、姉は少しだけ思い出した。

 弟は、会いに来た人たちに尋ねた。「私には姉がいます。こういう人を見かけませんでしたか? 私たちには母がいましたが、亡くなりました。そして、姉も見失って、いなくなってしまいました。こういう人を見かけませんでしたか。」すると、村から来た人が言うのに、「長者の所の使用人で、一番みじめなのの中にいますよ。その女は、ある人を探していたが見つけることができず、使用人になったそうです。」

 ある日、長者が自らジャパドッジの所に会いに行った。会って見ると、非常に美しく、天人のようだった。

 彼には、毎日会いに来る人がいるから、1~2時間しか時間がない。あまりにも会いに来る人が多いのだ。2日のうち1日は会うことができない。

 ジャパドッジには、使用人がいた。その使用人たちに、30騎の人馬を率いさせ、村へ見に行かせた。使用人たちは領主に呼びかけた。「あなた方の所には、どのような使用人がいるか。」呼びかけたとき、姉のことがちらっと見えた。「あの人は、ジャパドッジのお姉様だ。こちらへ渡していただきたい。」「渡さない。そいつは、一生私たちの所に住むべき者だ。私たちは、飢え死にしない程度に食べさせている。」それで、渡してもらえなかったので、ジャパドッジは悲しくなった。


5.

 ある日、ジャパドッジは、ぼろぼろの服を着て出かけていった。夕方頃に出かけた。領主の使用人たちは、夕方、1か所に集まる。領主には、30人ばかり使用人がいた。ジャパドッジの使用人は、もっとたくさんいた。

 さて、領主たちは上の階にいる。使用人たちは、下の牛小屋にいる。そのとき、使用人たちは晩ご飯を食べていた。ジャパドッジは尋ねた。「あなたがた使用人には、どのような人たちがいるんですか。」「私たちには、こんなのや、あんなのがいますよ。」

 姉の名前は、イェシェンツォモといった。彼らにつけられた名前は、美しかった。母親はずば抜けた人だったのだ。

 使用人たちが言うには、「その娘は、真っ暗になる少し前でないと帰ってくることができない。私たちは十何日か雇われているのだが、その娘は一生の使用人だ。」

 そうするうちに、娘が帰ってきた。ジャパドッジは、「この人は私の姉さんだ、確信がある、私の姉さんに違いない」と思った。

 その娘は、帰ってくると、スープの汁気をよそった。さて、ジャパドッジは、自分のお碗を持っていた。それを、差し出した。母にもらったお碗だ。娘は、腕輪を一つ持っている。

 イェシェンツォモ、仕事に出るときは一番最初、帰ってくるときは一番最後、食べるものはみじめなものばかり。名前はイェシェンツォモという、美しい名だった。

 さて、ジャパドッジがお碗を差し出したが、スープは一碗分しかなかった。その一碗分を、もう娘のお碗に注いでしまったのだった。

 娘は、「私のお碗の中のをあなたのに注いだら、汚いと思うんじゃありませんか。」「汚くありませんよ。」と言ったので、娘はジャパドッジのお碗に注いだ。そしてまた、「あなたのお碗に注ぎましたが、大丈夫ですか。」「大丈夫、大丈夫。」

 それから、かれら姉弟はおしゃべりをした。

「あなたはここに、どのようにして来たんですか。そして、どんな状況ですか。」

「私がここに来た事情というのは、弟を探しに出たんです。弟は、一人のおばあさんが連れ去ってしまいました。弟は、名を、ジャパドッジと言います。私のうちでは、母もなくなりました。私自身、よその土地をさまようしかなくて、このような状況です。」

「あなたのお母さんは、どんな方でしたか。近所の人には、どんな人がいましたか。」など、(弟は姉に)何もかも尋ねた。そして、(姉は)全部、細大漏らさず話した。

「あなたは今夜、何をしにここへ来られたんですか。」

「私は、イェシェンツォモという人を探しに来たんです。」

「私の名前はイェシェンツォモといいますが、名前が同じ人というのはいるものです。あなたは、使用人になってはいけません。使用人というのは、みじめなものです。私はそうするしかなかったんです。母も死に、家も壊れ、弟もいなくなりましたから。私には、頼れるところがなかったんです。」そして、姉はまた言った。「母は、私に腕輪を一つくれました。弟には、お碗を一つくれました。」

 弟は言った。「このお碗ですか?」姉が言った。「あら、どうやら、似ていることは似ています。これかしら? よく分からない。覚えていないの。」

 そうして、話をしているうちに、はっきり分かった。「私はあなたの弟です。」二人は、それまでどのように過ごしたかを語り合った。


6.

 翌朝、弟は領主のいる階に上がっていった。「この人を、私に渡してほしいんです。」「いいや、あの子は渡さない。あの子は、一生ここにいると言ったのだ。あの子が飢えて死にそうなとき、私たちの所へ来た。あんたには渡さない」弟は、お願いしたが、同意してもらえなかった。

「では、私は帰ります。十日くらいしたら、あなたを迎えに来ます。」と言って、弟は、こっそりと帰って行った。

 彼の着ている服はぼろぼろだ。帰ってみると、彼に会いたがっている人がとてもたくさんいた。それで、家の裏から入っていった。彼は、変化の術が使えた。使用人の一人が、最初に家の中を見に入ったとき、彼はいなかった。そのあと、別の使用人が見に来たとき、彼はそこにいた。「うそつきめ、いらっしゃらないと言ったじゃないか。ジャパドッジはいらっしゃるぞ。」ジャパドッジは変化の術ができるということで、ますます名声が大きくなった。

 そして、翌日、彼は使用人たちに言った。「300人ばかり来てほしい。」そして、自分も一緒に領主の所へ行った。領主の所へ着くと、「この人は、私の姉だ。こちらに渡してほしい。」すると、「はい、どうぞ」と渡してくれた。領主は非常に喜んで、盛大な見送りをしてくれた。

 そうして、とうとう、姉と弟は一緒になれた。

 おしまい。


(語り:タシチュンツ、採録:白井聡子、2007年8月26日)

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