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Thursday, September 06, 2007

どうもお久しぶりです。

8月に2週間ほどいつも行く調査地の近くの町までいって調査、帰国後すぐに引越しをし、この9月からAA研に来ました。

暑いのはまだ耐えられるとしても、内地 (北海道方言) の湿気にすっかりやられています。まだ引っ越してきたばかりですが、もう温帯モンスーン気候はお腹いっぱいで、亜寒帯の調査地が恋しくなっています。

◇◇◇ 嫁とりの話 ◇◇◇

さてと、何を話そうかなあ。

昔聞いた話なんだけど、あの岬をぐるっとまわった向こう側にアルカーウン(*1)という岩があるだろう。その話をしてやろう。

あるとき、娘を嫁にやるのを惜しんだ男がいたんだけどね、その娘を嫁にもらおうと若い男がやってきた。年とった男は若い男にこういった。

「山の上からアルカーウンにうまく飛び移ることができたら、娘を嫁にやってもいい」

アルカーウンは岸からかなり遠くて、まわりは岩礁だらけなんだよ。ここからうちの魚干し小屋くらいまでの距離があるんだ(*2)。そのころの男たちというのは走らせればものすごく早いし、とほうもない距離を歩けたし、どんな川でも岩でもひとっ跳びだった。

若い男はいった。
「じゃあ、ひとつやってみよう。しかしまるで俺を殺そうとしているみたいだな」

年とった男はいった。
「うまく跳びうつれたら娘はおまえのものだ。どこへでも連れていくがいい」
「よし、やってみよう」

若い男はそういって歩きだした。高い山の上から下の岩にむかって跳びうつるために。

まったく、昔の人はひどいことをしたものだよ。

若い男は山の上から飛び降りた。どおんとものすごい音がして男はアルカーウンに飛び降りた。

娘の父親は皮張りの小舟を出して、アルカーウンまで若い男を迎えにいった。そのころはみんな皮張りの小舟を使っていたんだ。

娘の父親はいった。
「娘はおまえのものだ。どこへでも連れていけ」

若い男はいった。
「おまえはおれが死ねばいいと思っていたんだろう。おれはもうちょっとで殺されてしまうところだった。娘はいらない。おれは死人も同然だ。あんなに高いところから飛び降りたので、もう体はがたがたになってしまった」

娘の父親が飛び降りろといったので、若い男は飛び降りたんだ。

そして嫁とりに来た男はいった。
「おれは帰るよ。おまえの娘など頼まれてももらうものか。もうちょっとで殺されるところだった」

それからどうなったのかは知らない。

———–
*1 ylqawwyn (yはシュワ): ylqa- 「陰茎」、-ww 「岩」、-y (挿入母音)、-n (絶対格単数)。
*2 この話を再録したゴリコフ氏の自宅から魚干し小屋までは300m程度。

2002年 サウェーリー・ゴリコフ氏より採録

永山ゆかり(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

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